2006年8月20日

レバノン停戦が、いかに形式だけのものあるかが、はっきりしました。イスラエル軍が、ベッカー高地で「シリアからヒズボラに武器を運びこもうとしていた疑いがある」として、車両を攻撃したからです。国連の停戦決議は、イスラエルには「自衛目的を除く、攻撃的な軍事作戦の停止」を求めているため、イスラエルは自衛のためという大義名分を掲げれば、攻撃を続行できるのです。これに対し、ヒズボラは全ての軍事作戦の停止を要求されています。イスラエルは、ヒズボラの武装解除と、拉致された2人の兵士の解放という最大の目標を、いまだに達成していません。このため、今後も軍事行動を続ける可能性は高いというべきでしょう。一方、ヒズボラもこの停戦を、武器の調達と再編成のために利用するはずです。

国際社会の尻込みにもあきれました。国連はレバノン南部に、強力な武装を持つ1万5000人の平和維持軍を投入すると言っています。アメリカとイギリスは参加しないため、最も期待がかけられていたのが、レバノンのかつての保護国であったフランスです。ところが、同国はわずか200人の兵士しか派遣できないと先週発表し、世界中の嘲笑の的になっています。それはそうでしょう。精強ぶりで知られるイスラエルですら、手こずったヒズボラの武装解除をできる国は、世界のどこにもないでしょう。1980年代のレバノン内戦で、アメリカの海兵隊員ら240人が死亡した爆弾テロも、ヒズボラにつながるシーア派テロ組織が絡んでいたと言われています。

どの国も火中の栗を拾わされるのは、いやなのです。ドイツは「過去の問題」を理由にして、戦闘部隊の派遣は拒否し、衛生部隊か海上警備にとどめるとしています。

こうなると、結局苦しみ続けるのは、ヒズボラとイスラエルの戦闘のとばっちりを受けるレバノン市民たちということになります。